【医療ニュースPickUp 2015年9月14日】 厚生労働省が行政処分 製薬会社のモラルとは何か
2015年9月1日、厚生労働省は「製造販売後安全管理業務に係る社内体制等に関する自主点検」の結果を公表した。厚生労働省はことし2月、国内に事業所がある272の製薬会社に対し、副作用の報告が適切に行われているかなどの調査を行っていた。
副作用報告漏れの原因は大きく2つ
これによると、薬の投与で重い副作用が出ていたにも関わらず、国に報告していなかったケースが46症例(69件)あったことが分かった。未報告のケースは、ブリストル・マイヤーズ株式会社 30 症例(42 件)、藤本製薬株式会社 6症例(6件)、セルジーン株式会社 5症例(6件)、ヤンセンファーマ株式会社 4症例(14 件)、武田薬品工業株式会社 1症例(1件)だった。いずれも、添付文書の改訂など、追加の安全対策を講ずる必要がある副作用報告はなかったという。
主な副作用報告漏れの原因としては、
●医療関係者から入手した講演資料等に記載された副作用や、コールセンターに寄せられた患者情報に含まれていた副作用が、安全管理統括部門に報告されなかった
●医薬情報担当者(MR)が自ら入手した副作用を報告不要と誤って判断したため安全 管理統括部門に報告されなかった
などが挙がっている。厚生労働省は5社に対し、詳しい報告を求めるとともに、再発防止策を取るよう指示した。
厚生労働省がこの調査を行った背景には、大手製薬会社ノバルティスファーマが、抗がん剤などの副作用を国に報告していなかった問題がある。
同社が製造販売する11成分の第一種医薬品(処方箋医薬品)に対し、同社は212症例の副作用を把握していたにも関わらず、厚生労働省に対する報告が行われていなかったことと、安全管理情報を適切に収集する義務を、安全管理責任者又は安全管理実施責任者が果たしていなかったことがある。厚生労働省は同日、ノバルティスファーマ社に対し、行政処分(業務改善命令)を行った。
処分内容としては、医薬情報担当者(MR)だけではなく、全社員に対して「副作用の情報は適切な報告が行われるべきものである」等、教育訓練の徹底などを挙げ、「改善命令発出後1ヶ月以内に、是正措置及び再発防止策に係る改善計画を策定して、厚生労働省に提出すること」としている。
参考資料
厚生労働省 医薬品医療機器法違反業者に対する行政処分について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000094443.html
同上 「製造販売後安全管理業務に係る社内体制等に関する自主点検」の結果を公表します
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000096173.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
個人的に、この問題はあってはならないことだと思います。どんなに有効性の高い薬剤でも、万人に副作用が出ないものではありません。
その報告義務を果たしてこなかった製薬会社は、意外と多いというのが驚きでした。この調査がどれくらいの期間を対象にしているのかは分かりませんが、ノバルティスファーマ社の212症例は論外として、ブリストル・マイヤーズ株式会社 30 症例(42 件)もかなり多いと思います。添付文書を書きかえるほどではないにせよ、注意喚起をする必要は、本当になかったのでしょうか。
この問題、本当に「報告義務があることを知らなかった」のか、「知ってたけど黙ってた」のか、その理由によってはかなり悪質ではないかと思います。今時、薬剤投与による副作用を「報告しなくて良い」などと教育されるはずはないと思いますので、「知ってたけど黙ってた」のではないかなと、個人的には考えてしまいます。
ここ数年、新規開発された抗がん剤が、非常に増えていますよね。新薬の承認にかける時間も、短縮される傾向にあります。これ自体は良いことだとは思いますが、その反面、こういった問題が起こると、患者としては安心を買うことは難しくなりそうです。
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